社長のつぶやき

2019/05/09

『今月の一言』(2019/05/09)

 先日、ブラジルの高名な漫画家、マウリシオ・デ・ソウザ氏をお招きし、島根県出雲市の中学校と市長を訪問、楽しいひと時を過ごしました。マウリシオ氏は、日本で言えば手塚治虫氏、アメリカで言えばウォルト・ディズニー氏のような国民的漫画家で、通訳をお願いした女性も大緊張、帰りには泣き出すほどでした。恥ずかしながら私はお名前も存じ上げず、日系ブラジル人のみなさんに教えていただき、歓待した次第です。

 中学校を訪問した際、マウリシオ氏は約40分間、日系ブラジル人生徒23名の前で静かに語りかけ、「私には学歴もない、漫画しかない。しかし、若い頃は私の作品をどの雑誌社や新聞社に持ち掛けても採用してもらえなかった。『そんなことはやめて真面目に働きなさい』とまで言われた。でも、自分を信じてひたすら耐えてがんばった。今は会社も大きくなり、社会的評価も上がり、84歳になって充実した老後を迎えることが出来ている。みなさんも異国の日本で大変だろうが、自分を信じがんばってほしい。」というお話をしてくださいました。

 私たちが日本語で話すのと彼がポルトガル語で話すのは、心の浸透度が全く違うようで、卓話の後は質問が相次ぎ、市長訪問の時間が迫って心配になるほどでした。彼らが日本語で話す我々に対し質問をすることはほとんどありませんが、慣れ親しんだポルトガル語であれば、あれだけ自由に胸襟を開き、思いを打ち明けることが出来るのでしょうね。外国人の管理や工場の生産請負でごはんを食べている私自身のあり方を考えさせられました。

 さて、先日、当社の方針発表会にて、社員に向けてヨーロッパとアジアの人材流動可能性について話をしました。その一部、ASEANの人材流動可能性について少し考えてみたいと思います。

 アジアにおいて人材受入可能性が圧倒的に高い国、日本。次いでシンガポール、台湾、そして韓国と続きます。大学進学率(※)は日本の63.58%に対し、中国は51.01%、タイは49.29%、インドネシアは36.28%、ベトナムは28.26%と続きます。韓国に至っては93.78%、しかし、全求人の1%ほどしかない財閥系企業の求人に就職希望が集中し、そこから溢れた人々が国内の中小企業ではなく日本に就職を求め、大量に押し寄せてきています。インドネシアやベトナム等も学卒者は急増していますが、学卒者を吸収する労働市場はまだ少なく、今回新設された「特定技能」ビザは大学卒業者の受入れビザとして有効なツールとなっています。ただ残念なことに、安倍総理は2018年2月の経済財政諮問会議においても、「安倍内閣として、いわゆる移民政策をとる考えはありません。この点は堅持します。他方で、5年間のアベノミクスによって、有効求人倍率が43年ぶりの高水準となる中で、中小・小規模事業者の皆さんを始め、深刻な人手不足が生じています。在留期間の上限を設定し、家族の帯同は基本的に認めないといった前提条件の下、真に必要な分野に着目しつつ、制度改正の具体的な検討を進めていきたいと考えています。」と述べ、この思いを実現したのが「特定技能」ビザなのです。働く目的以外の人は受け入れないということです。今までの技能実習ビザは今後も継続することとなり、技能実習は高等学校卒業者、特定技能は学卒者の労働市場とはなりますが、あくまで3~5年後の舵取りであって、今後2~3年は技能実習の潮流に大きな変化はなさそうです。

※UNESCO統計より。ここでいう大学は、UNESCOの定義する ISCED2011のLEVEL5-8で、大学相当の全ての高等教育機関が含まれる(日本での四年制大学・大学院、短期大学などに相当)

ページの先頭へ