社長のつぶやき

2019/04/04

『今月の一言』(2019/04/04)

 3月7日、島根県社会福祉協議会から職員対象の「人権研修」で講師をしてほしいとの依頼を受け、県老人福祉施設協議会、県共同募金会の職員の方々もご参加、2時間近く講演させていただきました。様々な講演依頼をいただきますが、社会福祉協議会から私に要請が来ることはまれで、現状の多文化対応に戸惑いがあることがよく分かりますね。講演の最後に必ずと言ってよいほどされる質問は、「外国人が増加して犯罪は増えないか?近所に自分たちと違った人たちが増えるのは怖い。」というものです。この答えは図で見ていただくのが最も分かり易いので、図で答えさせていただきました。まずは図1をご覧ください。外国人入国者数と来日外国人犯罪の検挙件数は反比例しているのです。中でも、島根県で急増している日系の外国人はほとんど「定住者」の在留資格ですが、「定住者」の犯罪検挙人員は、2005年2,275人から2017年1,512人へと激減しています(図2)。報道の偏りにも問題はありますが、県民のみなさんの異文化嫌悪が表出しているのかもしれません。

 アメリカの文化人類学者、エドワード・T・ホールが唱えた「ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化」という識別法があります。「ハイコンテクスト文化」は共有性が高い文化のことで、伝える努力やスキルがなくても、相手の意図を察し合うことで、話し合わなくても何となく通じてしまう「阿吽の呼吸」のようなコミュニケーションスタイルです。日本文化はこの傾向が強く、異文化が入りコミュニケーションが滞ると一転してお互い話が続かず、「阿吽の呼吸」も働かず、相手の考えていることや言っていることがよく理解できなくなっていきます。元々「ハイコンテクスト文化」の人はコミュニケーション能力が高くないので、話し合いで解決しようとせず、内にこもり、一層不安感や不満が累積していきます。

 一方、ブラジルや欧米など「ローコンテクスト文化」の人たちは、どんな場合も言語を使ってコミュニケーションを図ろうとします。従って、コミュニケーション能力(論理的思考力、表現力、説明能力、ディベート力、説得力、交渉力等)が重要な生きる力、存在の証明になっているのです。しかし、日本では、「そんなことまで言わなくても...」が人格上の美徳とみなされていますね。そのため、ブラジル人にとっては、「話し合いで解決しようとしない日本人は冷たい。何を考えているのかよく分からない。」という印象になっていくのですね。「以心伝心社会と言わなければ分からない社会」、世界の大勢は圧倒的に言わなければ分からない社会です。避けられないグローバル社会に向け、日本が前向きに変わらざるを得ませんね。

 自民党は、「移民=入国時に永住権を持っていること」と定義して、「就労目的で来日する人は移民とみなさない」としています。国連や国際移住機関は、個人の経済状況に関係なく1年以上外国で暮らす人を移民とみなすとして、教育、医療福祉など生活者としての権利を付与するよう求めていますが、日本は教育すら義務化することはありません。日本のように義務教育年齢相当の外国人のうちどこに居るのか把握不能な人が全体の20%を超えても、個人の問題であって行政の問題ではないと処理している現状は憂えざるを得ません。

 当社は、今年10月に島根県で企業主導型保育園の開園を目指しており、建設を急ピッチで進めています。なぜ保育園を開設せざるを得ないのか。私は、「日本でいじめに遭ったことがない」という日系人を知りません。ほとんど(私の感覚では95%ほど)の日系人が「ハイコンテクスト文化」において違和感のある人を排除する日本人からいじめに遭っていて、30%余りの日系人が不登校・非就労で、成人になったのち社会人として共生できず苦しんでいるのです。そのため、違和感のない日本人的な思考、行動、そして耐える心の拠り所を持った日系人を育てたいのです。多くの日系人が日本人に潰されるのを見てきました。だからこそ、日本での生活に違和感を覚えないように、保育園で育てていきたいのです。家に帰ればブラジル人として思う存分過ごせば良い。日本は異質性が売りになる国ではありません。国籍、肌の色や日本語力より、人間性やビジネスプランを優先する国になるには、まだ2世代はかかるのが日本です。この保育園で日本型共生とは何かを探していきたいと考えています。



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