社長のつぶやき

2018/08/01

『今月の一言』(2018/08/01) NEW

 「歴史は勝者がつくる」と言いますが、敗者の中でも優劣があり、なぜかと思うことが数多くあります。
先日、鹿児島県の取引先等を訪問した後、特攻隊で有名な知覧特攻平和会館に立ち寄りました。飛行機は様々な空港から飛び立ちましたが、全特攻戦死者1,036名のうち439名、全体の半数近くが知覧基地から出撃しました。「必死」、必ず死ぬ(亡くなる)作戦で、映画『俺は、君のためにこそ死ににいく』を観た方も多いと思います。特攻隊としてはもう一つ、潜水艦魚雷「回天」がありますが、これで亡くなった人は正確には分かりませんが、400人位と言われています。最も多く(3,000人余り)亡くなった特攻艇「震洋」について、我々は詳細をほとんど知らされていません。震洋は、先端部におよそ250kgの爆薬を仕込んだベニヤ板のモーターボートで、全長は6m足らず、終戦までに6,200隻造られたといいます。航続距離が非常に短く、スピードは魚雷の半分とあって、震洋製作途上に爆撃されたり、運良く船を出しても途中で沈没させられ、大きな成果はなかったようです。「神風特攻隊」の数倍の死者を出しながら、なぜ国民の知るところとならなかったのか。震洋は、乗組員以外の整備士、衛生兵、輸送兵のほとんどが一緒に死んだのに、飛行機隊は操縦士以外ほとんど亡くなりませんでした。神風特攻隊は、知覧高等女学校の女子学生の献身的なサポート、ラブロマンスもあって、敵艦への命中率は3%以下だったそうですが、実像以上の大きな存在になって歴史に残り、飛行機隊隊員は4階級特進、「震洋」隊は2階級特進もいなかったといいます。大切なのは世論であり、共感のようです。しかし、共感というのはくせ者で、特攻前夜の遺書において、一人の若者は、「悠久の大義に生きることをよろこびといたします。生を捨て、義をとる。これが武人のたしなみであると思います。〇〇は男として軍人として立派に戦士いたします。褒めてください。」と綴り、別の一人は、「笑ってください。散りてつくす〇〇の孝行」、もう一人は、「俺が死んだら何人泣くべ。」など、死に至っても様々な人たちの共感を意識し振舞おうとします。死んだ後、誰が何を言おうと関係ないのではないかと思いますが、そうはいかないのが人間なのですね。

 2年程前に神奈川県相模原市の「津久井やまゆり園」で、入所者19人を殺害し、入所者と職員計26人に重軽傷を負わせた元職員の男(28)は、やまゆり園の入所者にベッドのそばまで近づいて一人ずつ語り掛け、意思疎通のとれない人間を「心失者」とし、「生きるに値しない人だから殺害した」と言います。大切だと認める命と価値がない命をどう峻別するのか。その線引きは人間に出来るのでしょうか。しかし、何となく納得された方も多いと思います。ここに人間の弱さがあります。某大手新聞社は、平均年収がおよそ1,200万円だと言います。その新聞社は、年収200万円以下の所得層特集をよく行いますが、共感される記事が書けるのでしょうか。相模原事件でもその新聞社は50人近い記者を動員、被告の男の極悪非道さ、命の尊厳について連日書き連ねました。実に正論ですが、違和感を覚えた方も数多くおられたようです。人は、体制側に入ると自分を客観的に見られなくなります。被告の男も自殺しなかったところを見ると、「自分は生きるに値する」と考えているのでしょう。新聞社社員も、その賃金差に自分は選ばれた人間だと思っているのでしょう。

 以前社民党が国政選挙で大敗した折、事務局職員を大量にリストラ・解雇しましたが、秘書の再就職斡旋は社民党ではなく、与党の自民党が熱心に手伝った話を聞きました。学者さんで実務能力のない人が世論をリードした時の怖さは、我々も理解しなければなりません。
 話が飛躍しましたが、人間が心の奥に持つ魔性に目をつぶり、目をそらすことで根拠のない世論に流されていては、社会は幸せに進化することはありません。多くの人は口には出しませんが、被告の男のように、生産性の低い人は要らない、違和感のある人は自分の近くに住まないでほしい、生活保護費で私たちの税金を使わないで...などと思っているものです。人手不足が喫緊の課題となり、外国人受入れ議論が白熱化していますが、歩み寄りを外国人にだけ求める日本人の根っこに同じものを感じています。今更ながら、パナソニック創業者、松下幸之助氏が終生求め続けた「素直な心」、この言葉の偉大さを感じる鹿児島出張でした。

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