社長のつぶやき

2018/05/30

『今月の一言』(2018/06/01)

 「何を読んでいるんだ」と言われそうですが、今私はヘルマン・ヘッセの長編小説『車輪の下』を読んでいます。1905年に発表されてから110年以上経つ作品ですが、名作は色褪せませんね。あらすじを少し紹介します。
 ドイツ南西部の小さな町に、町始まって以来の秀才と言われるハンス・ギイベンラアトは、超難学校の神学校に2位の成績で合格します。栄冠を勝ち得たハンスは、希望に燃えて入学するのですが、頭痛、倦怠感、幻覚などの症状が出現し始め、成績は下降、昔ながらの型にはまった神学生を求める教師や校長は怒り、軽蔑し、そして最後は見放し、ついにハンスは学校を退学し故郷へと戻ることになります。最後は自堕落な生活の果て、酒に酔って、川に落ち溺れ死にます。
 彼に神学校進学を勧めたラテン語教師はハンスの葬儀でこう言います。

  「そう、こういうことはつらいものですね、ギイベンラアトさん。」とかれは、思いやりを込めて言った。
  「わたしもこの子がすきでしたよ。」
  「どうもがてんが行かん。」とギイベンラアトはためいきをついた。「この子はじつにできがよかったし、
  また何もかもうまく行ってたのだがね――
  学校といい、試験といい――ところが、それから急に、つぎつぎと不幸がかさなってきた。」
  靴屋は、墓地の門をぬけて立ち去ってゆくフロックコオトの連中を、ゆびさした。
  「あそこを紳士がたが何人か歩いていますがね、」とかれは小声で言った。
  「あの連中も、この子をこんなに目にあわせるのに、手をかしたわけですよ。」

 ヘルマン・ヘッセは最後にこう言わせています。
「車輪の下」は「車輪の下にはいる」が直訳のようで、つまりおとなの社会の論理、無条件の服従、利己主義という重い「車輪の下」でもがき続け、その圧力につぶされていくハンス少年という「社会的弱者」の運命を描こうとしているのです。

 さすがはノーベル賞作家ヘッセさんですね。

 さて、私は日系人受入に対する日本の対応にヘッセさんと同じ言い知れぬ憤りを感じています。マクロで見れば日本政府は移民政策は無いといいます。
 しかし、リーマンショック時、帰国支援費をもらって帰国した人、そして日本国内においても親の失業で住む場所もままならず教育が滞った人たちのいかに多いことか。高齢特別永住者の20%近くが生活保護、中国残留孤児は50%、インドシナ難民にいたっては80%が生活保護だといいます。
 ヘルマン・ヘッセは『車輪の下』で、「世の中には忘れ去ることのできぬ、そしてどんな後悔によっても償われぬ。そういう罪と怠慢があるものだということをかれはさとったのである。」と述べていますが、リーマンショック時の教育の寸断で義務化されていないことで教育が途切れ、日本語で話すのは100%なのに、履歴書も満足に書けない青年が来るのを見ると、日本国民のひとりとして慙愧(ざんき)に堪えない思いがします。

 明治45年に財団法人大阪職業紹介所を創設した私たちの業界の先覚者である、八浜徳三郎氏の言葉をご紹介します。(7年前にも紹介しましたが、再びご紹介します。)

  手をとりて共に泣かばや  泣く人の痛む心に心合わせて 
  泣く人の涙たづねてぬぐわなむ わが眼ぬぐいし袖をすすぎて

 改めて私達業界人はこの言葉を胸の奥深く心の道しるべとして携える必要がありそうです。

 さて、私たちは、7月1日より名古屋駅近くで人材育成スクールを始めることになりますが、CAD、CATIA、SOLIDWORKS、日本語、電気工事士、介護ヘルパー初任者研修、他実に様々な講座を予定しています。(一度に全てを開講するわけではありませんが)

 経営者を育てる講座も始めたいですね。(私は様々な経営者を知っています。自らも半世紀近く経営者をしており、講座を持ちたいと考えています。)
 確実に労働市場は上振れします。10年後には、IOTで置き換えできる仕事が数多く出現、多くの仕事が消えるもしくは縮小していきます。銀行は今もリストラしていますね。運転手不足といいますが、10年後は確実に人手余り産業でしょうね。アメリカのトイザらスやコダックは倒産、ゼロックスもほぼ消滅、レンタルビデオ、CDショップも10年後は消滅しているのでしょう。派遣会社もまず間違いなく10年後はありませんね。請負会社やEMSは発展していくのでしょうが。
 マッキンゼーのリポートでも、IOTで仕事は消滅するのではなく、劇的に変化するのであり、働く側がその変化に順応するかどうかで生き残り、もしくは発展するとしています。わくわくしてきませんか。
ただそこで大切なことは、働く人、マーケットとの共感です。先程の八浜徳三郎氏の言葉を今一度かみしめ、たじろぐことなく上場への歩を進めていきたいですね。

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