社長のつぶやき

2017/09/05

『今月の一言』(2017/09/05) NEW

 8月初旬、メーカーさんの要望もあり北海道旭川市から少し離れた雨竜郡(うりゅうぐん)妹背牛町(もせうしちょう)の、とある鋳造会社を訪問しました。ベトナム人実習生が数十名働いている会社です。技能実習生の受入れには事業協同組合の参加が必要です。訪問した会社は、所属組合を1つだけにするとそこが受入れ停止になった時に会社が存続不可能になってしまうほど、実習生への依存度が高くなっていました。技術ビザ人材や留学生、日系ブラジル人の直接雇用で人件費のリスクを分散し、基盤人材は実習生のようなコストカット人材も含めた複線型人事を考えたいとのご相談でした。

 調査してみると、北海道は以下のような大変な状況にある地域であることが分かりました。

 北海道経済連合会(以下:道経連)は、次のような予測を出しています。2010年に551万人だった道内の人口は2040年には25%減少し414万人に、生産年齢人口は351万人→210万人と40%も激減すると発表しています。逆に、高齢化率は24%→40%と急増するそうです。これは北海道全体が平均して悪くなるのではなく、特定の地域と産業が選択的に急激なダメージを受け衰退していく、としています。

 0.53%―これは平成28年12月時点の北海道の外国人数の割合です。東京都内は3.67%、愛知県内は2.98%です。数字よりも気になるのは、北海道に住む外国人で一番多い在留資格が「技能実習(滞在可能期間が最長3年間の一度限りのビザで、技術も経験も北海道に蓄積されることはない)」ということです。全国的に一番多いビザは「永住」「定住」です。生活者・地域の担い手として、仕事以外の貢献度が大きいビザですが、北海道ではこの資格で滞在をしている人が非常に少ないです。「留学生ビザ」も就職、永住に繋がりやすいビザですが、道内では過去5年間で平均2700人前後、ほぼ一定で増加の傾向にありません。北海道内の留学生で就職した人は昨年わずか181名。長期滞在可能で有意な在留資格の外国人の力が生かしきれていない現実が浮かび上がってきます。つまり、外国人の人事戦略がない地域が北海道だったのです。

 訪問した日、ある飲食店で働いていた女性にご両親の出身地を聞いてみました。両親は共に北海道で生まれたそうです。さらに聞くと、母方の祖母は岡山出身、父方の祖父の出身地は知らないそうです。「私は旭川生まれで旭川育ち、ここが好きだからずっと住んでいる」と言います。この言葉はとても印象的でした。まさに「地政学的アイデンティティの違い」を如実に示していたからです。

 「両親は北海道で生まれ育ち、私も北海道旭川で生まれ育ち、この先もここでずっと住んでいたい。」曾祖父母は記憶の片隅にもなく血のつながりも連想しないようです。たとえ複数の外国籍の血が入った外国人でも、3世代を経ると民族的アイデンティティはほぼゼロへ。寂しいことですが、地政学的アイデンティティで人間は生きていくのです。

 在留資格の他にもう一つ気になったことは、「過疎地域では全てにおいてバランスが崩れビジネスチャンスが見えてくる」ことです。高齢化が進み、お年寄りが介護施設で生活するようになると彼らの家は、当然「空き家」になります。家の供給は増える一方、過疎で需要がなく、買い手がいないのだから値段をつけることができません。私が訪問した一軒は、築数十年で茶室もあり広い庭付き、役場や駅からも近い家です。驚くことに、土地(60~70坪)と併せて100万円で売られていました。そこに実習生が住むことで空き家問題が解消、町に数少ない20~25歳の青年が増えれば消費も活性化するでしょう。地域行事を通して各国の実習生とさまざまな交流の機会をつくることで、文化交流も広げていく事ができます。

 様々な制約条件はありますが、それを補って余りある効果を期待できるのが、技能実習生制度のようです。

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