社長のつぶやき

2011/03/03

『今月の一言』(2011/03/03)

 先月、静岡県浜松市の日系人団体に呼ばれ、集会に参加しました。
彼らの発言で違和感を覚えたのは、ブラジル人が自ら住む団地を「ファベーラ(貧民窟)」と言っており、そのファベーラの家賃も払えず追い立てられているとご婦人が嘆いていたことでした。

 東北大学大学院を卒業したブラジル人の心理カウンセラーの女性が、あまりに精神を患う人が増えているためブラジル人学校の生徒を対象に調査を始めたと発言しました。
「本当の問題は隠れていて、団地内に住む日系人の全数調査をしないと見えてきませんよ。」と私が言うと、「調査のお金は誰が出すの、日本人は就業調査や就学調査はやるが、心の痛みや苦しみには関わってくれない。」と彼女は言いました。

 ノイローゼやうつ病等が集住団地に住むブラジル人の大人に多発、子どもたちにはDV・発達障害・適応障害が目立つようになっています。
児童デイサービス、療育デイサービス、そしてフリースクールを開設したいと、私たちがある団地に申し入れていたところ、先日返事が来ました。
返答は、「地元との関係が以前より良好な関係とは言えない状況で、地元との関係を良好に戻すことが先決であり、現在検討出来る状況にありません。」といった内容でした。

 寒空の下、団地のベランダに放り出され泣き叫ぶ子ども。不就学になっても誰と何を相談して良いのかも分からず、ゲームをしながら1日を過ごす子どもたち。
様々な事情で日本社会との関係が絶たれているのに、関心を持たない日本人。
リーマンショック以降、日系人に働いているかどうかを聞くと、「アルバイトをしている」と答えます。以前だと、「○○会社で働いている」と答える人が多くいました。
この2年余りで一気に雇用の底が浅くなったことを実感します。
働いても働いてもギリギリの生活を強いられ現状で精いっぱい、病気等アクシデントがあれば家族は崩壊、日系人家族は薄氷を踏むような不安定な生活基盤で毎日を過ごしています。
子供も家庭状況をよく分かっているので、13歳~16歳で働くことになります。

 ○○団地の話で思い出すのは、アメリカの心理学者フィリップ・ジンバルドーが行った有名な実験です。
新聞で公募した24名を無作為に「囚人役」と「看守役」に半分ずつ分け、囚人役は警察官に逮捕された後取り調べを受け、囚人服を着せられ監獄に入れられ、看守役は制服を着て警棒を下げ、囚人を監視する。
どちらもそれらしく振る舞うように指示されるわけではありません。
ところが、服を着せるだけで囚人役は卑屈な態度をとり、看守役は命令口調になり、本物らしい振る舞いになっていきます。
言葉遣いや行動が変われば、やがて思考方法も変わるようです。人間は服装だけで簡単に変わるのです。

 永住権を渡した仲間である日系人に空気のような存在を日本が期待するならば、彼らは日本社会にそして自らにも何の希望も持たず生活保護に依存する存在となっていくでしょう。
日本でようやく始まったばかりの多文化共生、○○団地の無関心を装う問題の先送り「臭いものに蓋」方式では、社会的最弱者の人たちは何を糧に生きていけば良いのでしょうか。

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